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バスコレクション 第32弾 日野の初期ノンステップバス編

2023年6月発売のバスコレ32弾を購入したので、そのレビューです。過去に改造で作ったものとも比較してみます。

※2023.07.01 側面窓パーツについて追記しました。

製品

ザ・バスコレクション 第32弾 日野の初期ノンステップバス


ボックスで購入。1台の定価は1650円、ボックスでは1650×12=19800円。某家電量販店にて2割引で購入しましたがそれでも15840円です。バスコレやジオコレの価格がどんどん上がっていますね…

名称の通り、日野の初期ノンステップバス(ブルーリボンブルーリボンシティ)が入った製品です。バスコレでこの世代の初期ノンステップバスは(日野に限らず)殆ど模型化されていないので、期待の高かった製品だと思います。


開封して並べてみます。購入したボックスにはシークレットの東武バスセントラル ブルリが入っていました(通常品は東武バスウエストブルーリボンシティ)。


付属のリーフレット(第30弾〜31弾は購入していないので分かりませんが、)今回は車両についての解説が無くなっていました。

 

外観





全体の外観。阪急バス(ブルリ)と京都京阪バス(シティ)を代表で。

 

車体各部

■前面



(画像2枚 クリックで拡大)

前面はブルリ顔とシティ顔の2種類。

雰囲気はよく出来ていると思います。ブルリ含め、ヘッドライトから上の車体部分は窓ガラスパーツと一体になっています。

こうして見ると、シティはライトベゼルの色が違うだけで顔の印象がかなり変わるんだなぁ… と。一方のブルリの方も雰囲気の違いがありますが、ライト周りの印刷の個体差によるものと思います。

京都市営バスのセーフティウィンドウ小は印刷表現です(実物はこの部分にドアコックの蓋がありますが模型では省略)。

 

■左側面



(画像2枚 クリックで拡大)


ブルリ ツーステップ短尺(2弾広電バス)との比較

左側面。日野の初期ノンステップは後輪が後ろ寄りにあり、リアオーバーハングが短いのが特徴ですが(そのため全長で言う短尺相当がM尺となり、標準尺相当がP尺)、それが再現されています。※今回の32弾ではM尺のみが模型化。
幅の広い中扉も良いです。

ブルリとシティでは側面窓後部の作りが異っている点が再現されています(前者は窓が小さく段差付き、後者は大きめのサイズでガラス側に目隠し処理)。

都営(ブルリ)と横浜市営(シティ)は中扉下部に明かり取りの窓があります。しずてつジャストラインは中扉がグライドスライド式です。今回の製品はブルリ/シティ + 中扉の形態の組み合わせで多くのパターンが作られています。

なお京都市営のプロトタイプは右給油ですが、車体は左給油のものが兼用されています(そのため後輪後ろの給油口の蓋は実物には無い)。

※今回入手していない東武バスの裏シクレ(通常品)のシティは、SNS上の模型画像を見たところ中扉引戸(明かり取り窓無し)、行先表示戸袋直前のようです。
また(左側面の)前輪後ろには蓋の印刷があります。プロトタイプについて調べたところ、前輪後ろ・後輪後ろの計2ヶ所に蓋があり、模型は1ヶ所タイプの車体を兼用しているようです。

京都市営の右給油も含めて、少数派の仕様(かつ目立たない部分)も作り分けるとキリがない(金型費用を回収できない)ので、兼用は止む無しかと思います。

これについて少し書こうと思います。

 

<バスコレの形態作り分けとコストについて>

バスコレなどのホビー用品に限らず、世の中の多くの工業製品は大量生産によって安い価格となっています。費用のかかる型を使い同じものを大量に作ることで価格を下げる仕組みです。

工業製品の大量生産に使われる金型は高価であり、例えば、(プラ射出成型とは異なりますが金型を使用した大量生産品の例として)単価数円の製品を作るのに必要な金型一式が数十万円~ものによっては百万円を超えることもあります(その分単価は上がる)
金型費用はかかりますが、これで何十万何百万と大量生産することにより、製品1個の価格が下がるというものです。

したがって、このような工業製品は少ない種類の金型で極力大量生産をする必要があります。

一方でバスコレは車両や事業者ごとの形態違いがあります。ある程度の作り分けをしなければ模型として成り立たなくなりますが、細かい部分や少数派の仕様まで再現すると金型費用の元が取れなくなってしまいます。どこまで再現するか・どこを省略するかが重要になると思います。

その意味では、今回のバスコレは後述の内装パーツ等を含めて、バランスがうまく取れているのではないかと思います。私はプラ射出成型の業界の人間ではありませんが…

 

■右側面



(画像2枚 クリックで拡大)

右側面。運転席後ろの太い柱、非常口後ろの形態など、同車の特徴が再現されています。

左側面と同様、窓サイズの違いによりブルリタイプとシティタイプが作り分けられています。

左側面のような扉形状の違いがないので、車体は2種類です。京都市営の給油口の蓋(前輪後ろ)は銀色の印刷表現です。

(2023.07.01追記)
■側面窓パーツについて

側面窓パーツは前述のように、ブルリタイプ/シティタイプ、(左側面は)中扉の形態、行先表示位置によって作り分けられています。

逆T字開口部はブルリがサッシあり、シティがサッシレス(ポッチ付き)です。

ところが模型をよく見てみると、ブルリの川崎市営バスと阪急バスのみ窓枠の印刷(逆T字の開口部)が太くなっています。

実物に何かの違いがあってそれを再現しているのか…? と思いプロトタイプを全車(シティ含めて)調べてみましたが、
ブルリは全てサッシあり、シティは全てサッシレスで、川崎市営・阪急のみの特徴は特に見つかりませんでした。バスコレで枠の印刷が太いのはです。

なお窓ガラスのスモークについては、今回製品は全て吹き付け塗装にて再現されています(京都市営、京都京阪)。最近のバスコレはこれを成型色で処理し、前扉や運転席周りもスモークがある残念仕様も出てきていますが、32弾はそのようなことがなく一安心です。

また熊本都市バスに関しては、実車の中扉は明かり取り窓付きの形態となっており、上から都市バスデザインのラッピングがされています。熊本市営時代はラッピングなし。
実物画像(都市バス)→ https://seta40416.exblog.jp/240870731/

模型は明かり取り窓無しとなっていますが、実物はラッピングにより窓があまり目立たないようなので(※あくまでネット上で写真を見ての感想)、さほど問題は無いかと思います。

シティの中扉明かり取り窓付きは横浜市営がありますが、行先表示位置が異なるため共用は不可→窓パーツを新規で作る必要がある、という事情もあると思います。

 

■後面



(画像2枚 クリックで拡大)

後面。特徴的な姿がよく再現されていると思います。

作り分けはナンバープレート位置の違いで3種類。都営の蓋は黒色の印刷表現です。

リアバンパー部分の灯具は赤色の反射材?のみが凹モールドで、バックランプがバンパー内にある場合は印刷表現となっています。

しずてつジャストラインは後面の車体にストップランプがありますが印刷表現です。これは特殊な形態なので致し方無いでしょう。

それにしてもバスコレの後面の行先表示、文字の表示部だけでなく枠部分も内側からの印刷にして欲しいなぁ… と。

東武バスの通常品はナンバー左オフセット。

細部の画像を。




以下実物画像。




近鉄バスはバスファン主催の貸切会で撮影。
京阪バスはバスコレのプロトタイプとは異なります。

模型を見ると、側面後部の黒いパーツ、後面の窓、位置の高いブレーキランプなど、特徴的な姿が再現されています。ただ後面ガラスはもう少し丸みがあっても良かった気もしますが…

後面窓のゴム枠は、25弾ワンステと同様に車体側成型となっています。

 

■屋根上



屋根上はデンソークーラー2種類と各種通風器があります。仙台市営バスは板状の通気口が付いています。

丸型通風器は2点留めのサイズが小さいタイプです。ここは最近の製品に使われている1点留めのやや大きいものを使って欲しかったなぁ… と。


クーラーの付いた屋根を裏側から見た様子。
取り付け穴が位置違いで2種類、計4箇所開いています。初期の扁平クーラーは後ろ寄り、小型のタイプは前寄りの穴を使うようです。

これは模型の製造工程を考えると "??" となります。

通常、バスコレの車体は屋根上の穴が開いていない状態で成型し、その後事業者ごとに位置の異なる穴を開けています(穴の位置ごとに金型を作り分けるとコストがかかる)。

今回は複数箇所にクーラーの穴が開いており(通常の穴あけであれば必要な箇所にのみ穴を開ける)、細部を観察してもバリ等がなく、成型の段階で穴が開いていると思われます。※通風器は通常通りの穴あけ

ここからは推測ですが←ここまでも推測だろう、これは成型段階で穴を用意することでクーラーの穴あけ工程を省き、コストを下げているのではないかと思います(複数箇所の穴を共通で用意すれば金型は1種類となる)。
ブルーリボンノンステはこの位置に必ずクーラーがある(穴を複数用意してもクーラーで隠れる)という点も、この手法が取れる要因かと思います。

昨今様々なものが値上がりする中で、少しでも価格上昇を抑えようとしているのかもしれません。

ちなみに画像の京都京阪バスはクーラー取り付け部分の嵌め合いがきつく、取り外しがかなり行いにくいです(というかビクともしない)。その他東急バスもややきつめでした(こちらはまだ外せるレベル)。※個体差があるかも

屋根上を見たところ、この2つは車体の塗装後にクーラーが取り付けられており、塗装時の塗膜が取り付け穴を小さくしている可能性があります。もちろん個体差があるかもしれませんが、部品取りでクーラーを使用する場合は注意が必要かもしれません。

 

その他 車体細部


中扉部分は扉のゴムの他、両側の車体部分のフチに黒い印刷がなされており、良い感じだと思います。


ブルリタイプは側面後部のブラックアウト部分の断面が目立つので、(窓下にモールが付いている部分も含めて)黒で色差しをすると良いかもしれません。

ホイールアーチの形状を比較。




ホイールアーチ、前輪と後輪で形が違うんですね…

実物と比較しても、形状把握はそれなりに良いと思います。前輪の両サイドの下部にかけてが直線的な気もしますが…

その他。


一部車両は側面ウインカーに銀の縁取りがあります)。細かいところまでよくやっているなぁ… と。

ただし32弾全ての車両にある訳ではないようです(手持ち分を見た限り 都営、東急、横浜市営、しずてつ、岐阜、京都市営、京都京阪、熊本にはあり)。事業者によってあったり無かったりするのが謎です。


今回製品はブルリ/シティとも、車体内側3ヶ所に赤丸で囲んだような凹形状がありました。見た感じ他のパーツが干渉する訳でもなく… 何なのでしょう。

 

■シークレットについて

今回のシークレットは東武バスブルーリボンで、実車数が裏シクレ(通常品)のシティよりも多かったようです。

実車数が多い車両をシークレットに入れることにSNS上で否定的な声もありますが、思えば23弾の阪急バスで、(同社で多数導入された)エアロミディをシークレットにして、(マイクロバスで台数の少ない)ローザを通常品にしたことに比べれば、まだ良いのではないか… と思います。

 

内装


内装パーツ。進行方向左側のノンステ部分はロングシート、車内後部は全て前向き座席となっています。内装はこの1種類です。

バスコレのプロトタイプには後部の座席が向かい合わせの車両もありますが、製品では省略されています。といっても模型は外観あっての車内表現なので、これは妥当なものかと思います。

※今回の製品は車体の作り分けに関して、前述のように ブルリ/シティ、中扉の形態の違いで多くのパターンが用意されており、外観の再現に手間が掛けられている印象がありました。


※赤丸については後述

運転席周りは運賃箱も再現されています。ノンステ部分の座席は何故か背もたれが低めです。

後部のエンジン部分は高さがあり内装パーツの色が窓越しに目立つので、アイボリーやグレーに塗装すると良いかもしれません。

そして今回、内装パーツは赤丸部分に凹みが付いています(反対側も同様)。これは分解・組み立て時に車体の固定用爪が通る部分で、これにより分解等の作業が行いやすくなっています。

 

■その他

今回製品は1つだけ、残念な点があります。


一部車両で前面コーナー部の塗装が斜めになっているものがあります。

個体差はあるかもしれませんが、ネット上で今回の32弾の画像を見ても同様になっているものを見かけました。前面の顔は印象を大きく左右する部分であり、全体の作りが良いだけに勿体なく感じます。いずれ手直ししようとは思いますが…

過去には奈良交通オリジナルセットの八木新宮線ブルリ(前面窓パーツが同じ構造)も同様になっていました。このタイプのパーツへの印刷は技術的に難しいのかもしれません。

 

改造品との比較


ここからは過去に作った同型車との比較をしていきます。

製作したのは近鉄バスに在籍したブルーリボンシティ天然ガス、鳥飼の0101です(模型は2019~2020年製作)。黄色ベースの車体に大阪ガスの広告が特徴でした。



まず全長を比較。上が改造品、下が32弾。

改造品はホイールベースが長めで、それに伴い全長も少し長くなっています。種車はBRCハイブリッドのM尺を使用しましたが(その分リアオーバーハングを短くした)、それでも長さが違っていたんですね…


ただし後輪の位置を基準に並べると、改造品(真ん中)と32弾(一番下)ではリアオーバーハングの長さが近くなっています(比較用に一番上が通常のブルーリボンツーステップ)。この点は一応再現できていると思います。

もちろん、尺や全長の違いは単体で見る分には分からないのでさほど問題は無いですが… (近鉄バスの鳥飼でBRCノンステップは0101のみだったため、他の同型車と並べることがない)

余談ですが、一番下の32弾製品のシャーシを見ると、横置きエンジンとそこから後輪へ伸びるシャフトの彫刻が再現されています。殆ど見えない場所ですが、流石バスコレ、きちんと作られています。実物はこういう構造になっているのか… とも思いました。




"ビルやお店の冷暖房は 今や、ガスヒーポンです。大阪ガス"

後面の比較。どちらも実物の雰囲気が出ているのではないかと思います。エンジングリルは改造品ではデカール表現にしています。改造品、窓のすぐ下に加工時の継ぎ目が見えていますね… 

3枚目を見ると、改造品と32弾とで窓の大きさやブレーキランプ位置のバランスが(車高の違いを無視すれば)ほぼ同じとなっており、少し感動。バスコレが正であるとすれば、自分の作ったものは間違っていなかったんだなぁ… と

32弾製品はナンバープレート取り付け部分が凹んでいる点が再現されています(改造品も実車は凹んでいましたが、面倒なので省略)。


おまけ画像。製作途中だった頃の姿。後部は25弾ワンステを2台使用しました。


内装。改造品は向かい合わせ座席を再現しています。実車(0101)は最後部が向かい合わせとなっており、幼少期から何度も乗車して強く印象に残っていたため再現しました。※改造品の方は内装パーツ(座席)をシャーシに直接接着しています。

バスコレ製品は前述の通り前向き座席です。京都京阪バス実車がどうなっていたかは調べてみたものの分からず…

比較はこんな感じです。

 

まとめ

今回のバスコレ32弾は好きな日野車ということもあり、久しぶりにボックスで購入しました(レビュー記事を書くためというのもありますが…)。

造形把握や車体の作り分けなど、ここまでで書いた通りよく出来ているのではないかと思います。不満な点も無い訳ではないですが、概ね満足です。この調子でブルーリボンワンステップ、その他のKC-世代の初期ノンステップ車も出して欲しいものです。

欲をいえば、関西圏で日野のヘビーユーザーである近鉄バスが模型化されていれば良かったなぁ… と。ただし近鉄バスは、日野の初期ノンステップについてはブルーリボンシティ天然ガスを導入したのみでディーゼル車を入れておらず、いずれにしても製品化は無かっただろうと思います。

と、こんな具合になります。ご覧いただきありがとうございます。


<メモ>
2023.07.01  側面窓パーツについて追記